大人たちの考えていること

 キリモミ君は思いがけないところで、あまりにも意外な話を聞いてしまったため、どうでるべきか考えあぐねていた。つまり、この館とウズラちゃんとの関係が意外な形で発覚した以上、自分がどう出るにせよ、本当の事を知ってからでないことには、あのプロトタイプが言っていたように大人たちに利用されてしまうだけである事に気がついたのである。キリモミ君は黄金の棺の中から早々と抜け出し、別の隠れ場所を探した。そして、今度は館の天井裏に隠れ、キリモミ君を探し回る従者たちの話に耳を傾け、徹底的に情報を集めることにしたのだ。そして、どうやら自分が持っているウズラちゃんのタイムカプセルが爆弾と勘違いされていること、従者たちにとって、心配なのはキリモミ君が迷子になっている事ではなく、この青い箱=爆弾の行方が心配で探しているのであることに気がついたのである。しかし、今はまだ出ていくわけにはいかなかった。いずれにしろ、この館とウズラちゃんの関係、そして、彼らの目的が何なのかを知るには『かの有名な金持ち』の本当の考えを聞き出す必要があったからである。そして、何はともあれ、誰にも気づかれないように館の最上階のウズラちゃんが寝ていた部屋へと移動していった。そこでキリモミ君はポケットの中から錐を取り出し、天井裏から穴を開け、部屋の中の様子をうかがったのである。そしてキリモミ君はウズラちゃんの意識が戻ったこと、しかし、ウズラちゃんがこれまでの出来事に大きなショックを受けて、目は開いているものの、周りのすべての事に無反応になってしまっている事を知った。キリモミ君の心は痛んだ。そして、本気で、何とかしなければならないと、キリモミ君が生まれて以来これほど絞ったことはないというくらい、最高に頭を絞り始めたのである。そして、突然、キリモミ君はネズミのチューの耳を引っ張ったかと思うと、誰にも聞こえないようなささやき声で、チューにこう言ったのだ。
「チュー、いいことを考えたよ。これはなかなかのアイデアさ。」
キリモミ君はチューの耳にその作戦をそっとささやいた。その計画を聞いたチューは、内心、本当に驚いてしまったのだった。キリモミ君はここに来るまで、この館のほとんどの部屋のドアを開けて中を見てきたが、それもあながち無駄な寄り道ではなかったのである。キリモミ君はこの館の構成、そして、どこの部屋に何があったか、すべて頭に入っていたのだった。チューの考えでは、アイデアとしては秀逸だと思った。だが、その計画はどこかで予定外のものが入り込めば、完全に失敗しそうにも思えた。しかし、それでもこの状況ではそれが最良の作戦だということには間違いなかったのである。

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