青い箱の行方

 突然館に現れたキリモミ君に従者長は驚いた。先週、あの昆虫車に勝手に乗り込み、警察に捕まった一件では、事後の処理に従者全員が大変な苦労をしたのである。あれだけの迷惑をかけたのだから、しばらく姿を見せることもないだろうと思っていたのに、その割にキリモミ君は嬉しそうな顔つきで登場したのだった。苦々しい顔の従者長に対して、キリモミ君は言った。
「ウズラちゃんに会わせてよ。僕たちはやっと見つけたんだ。ウズラちゃんの宝物をね。」
そう言って、キリモミ君は抱えていた青い箱を従者長に見せた。古びた金属製の青い箱と相変わらずのボロ服に従者長はさらに顔をしかめたものの、ウズラちゃんの唯一の友達であるキリモミ君をむげに追い返すわけにもいかず、かといって自分の持ち場も離れられなかった従者長は、最上階の部屋までの行き順をキリモミ君に教え、勝手に行くようにと言ってしまったのである。

 一方、整備工と従者長の弟は、青い箱があったはずの地面についていた足跡を追い、それが車庫の裏口のシャッターの隙間をくぐり抜け、そして、なんと『かの有名な金持ち』の館へと続いていることに気がついた。防護服を着た二人はその格好のまま、慌てて館へと走り込んだ。何事かと駆けつけた兄の従者長に弟は食いつくような勢いで言った。
「あの青い箱はどこに?」
血相を変えた顔つきの弟に従者長は逆に聞き返した。
「青い箱? それはお前たちが確認するはずのものだろう?」
「いや、そのつもりで準備していたんだ。ところが、車庫に入ってみると、もうそこにはなくなっていたんだ。誰かがこの屋敷の中に持ち込んだらしい。」
一同の顔が青ざめた。会計士と料理人も集まったところで、従者長が言った。
「しかし、今日、この屋敷に入ってきたのは私達以外には・・・。」
そこまで話して、従者長はあることを思い出したのである。
「そうだ、あの腹話術人形の・・・」
一同は従者長を見つめて叫んだ。
「キリモミ君?!」
従者長は頷いた。
「そう、キリモミ君だ。三十分ほど前、キリモミ君が屋敷に入ってきたよ。そうそう、青い箱を抱えてね。」
一同は目を丸くした。
「青い箱を抱えて?」
従者長は頷いた。そこで従者長は自分の犯した大きなミスにやっと気がついたのである。弟は兄の失態を責めるよりも、とにかく今は青い箱の行方が心配だったのだ。
「それで、キリモミ君は今どこに?」
「最上階のウズラちゃんのいる部屋へ案内したよ。」
皆はさらに青ざめた。大変なことになってしまった。もし、あれが本当に爆発物だったら・・・。
一同は、恐る恐る、この館の最上階の部屋へと近づいていったのである。

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