古びた映像の光と影に・・・(七)

 町の北側に位置している丘の上で、チンザ君によって再生されている映像も終盤を迎えていた。
ウズラちゃんのお父さんがカメラに向かってしゃべっていた。
「ウズラ、私たちの記録はもう、何も残っていない。この映像も一度再生されれば消去されるようにプログラムされている。私とお母さんを助け出してくれた前澤教授の息子さんとその仲間、そして、多くの町の人々の仕事は、それだけ完璧だった。だが・・・ウズラ、覚えているね? 私との約束の物があっただろう? 私は、あえてそのことを誰にも話さなかった。それだけは、お前が大人になるまで持っていなさい。私とお母さんがお前に残してやれる、ただ一つのものだ。そして、私は今まで話したこと、八年前にあった本当のことを伝えるために、ある腹話術人形にこの映像のカートリッジを見つけ出し、お前の手に渡すよう使命を与えたんだよ。もし、これをお前が見ているのなら、彼は仕事を完璧にこなしたわけだ。」
ウズラちゃんとキリモミ君は、その時、やっとあのいやみなプロトタイプが今まで黙ってその使命を果たしていたことに気がついたのである。ウズラちゃんのお父さんは言った。
「彼、独自のやり方に面食らったかな? だけど、彼、あの腹話術人形だって、なかなかいいやつだろう? ただ、彼には、もう一つ、使命があるんだ。最後の仕事だ。これで、決着がつくかもしれない。」
ノイズではっきりしなかったが、お父さんの目にも涙が浮かんでいいるようだった。お母さんは完全に泣き崩れていた。
「ウズラ、私たちは、いつか会えるときが来るかもしれない。運が悪ければ、・・・会えないかもしれない。だが、覚えていなさい。人間はたとえ、同じ屋根の下で隣り合って暮らしていても、相手のことを本当に想っているかは・・・わからないだろう?私たちは遠く離れているかもしれないが、心の中ではいつも想いあっているよね。それが大切なことなんじゃないだろうか? もう一度、言っておくが、これが最良の選択肢だった。私も、お母さんも本当に本当に苦しかった。もちろん、お前はそれ以上に苦しいだろう。だが、こんな私たちに命をかけてくれた人たちがいることを忘れてはいけない。
特に、あの、前澤教授の息子さんには感謝している。彼は一生、お前を陰ながら支えていくことを私たちに約束してくれた。
・・・時間だ。さようなら・・・ウズラ、・・・さようなら。」

* * *

そこで映像は途切れた。チンザ君の目から放たれていた光は徐々に消えていった。
ウズラちゃんは雨と涙でびしょびしょになってしまっていた。だが、それでもウズラちゃんは立ち上がったのである。
「私、用務員のおじさんを助けに行くわ。キリモミ君、手伝ってくれる?」

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