古びた映像の光と影に・・・(六)

 黒服の男はそこでもうやり切れないように話すのを止めてしまった。用務員のおじさんは、どういうことだ? というように周囲の人間達を見回した。そばに立っていたスカーフの女が後を続けた。
「こういう男だからね。自分の話が金になると思ったんでしょう。私たちに交換条件を持ちだした、というわけ。だけど、・・・この男の要求は上がる一方、なのに何もしゃべろうとしない。まあ、仕方なしに・・・私たちは丁度完成したばかりのこのマシーンの効果がどの程度のものか試してみた、というわけ。」
用務員のおじさんは吐き捨てるように言った。
「ひどいことを・・・。」
すると、黒服の男は一息ついたのか、再び話し出した。
「だが、・・・こいつには期待外れだったよ。こいつの口から出たのは腹話術人形に何か重要な部品を使った、ということだけだった。」
用務員のおじさんはハッとした。男は言った。
「お前が面倒見ているあのチビの女の子が抱えてた、あの人形だ。いいか? 手荒なことは出来るだけしたくない。現在の私たちの目的は既に絞られている。あの腹話術人形だ。キリモミ・・・とか言ったか? あのボロ人形だけ渡してくれれば何も文句はない。我々も何度も手に入れかけたんだが、その度に邪魔が入ってね。」
用務員のおじさんはこの時点で重要なことに気がついていた。
この連中は、いまだにキリモミ君とプロトタイプの違いが判っていないのだ。そして、・・・自分も勘違いしていたが、ウズラちゃんの両親が作ったのはキリモミ君ではなく、プロトタイプの方だったのである。
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