古びた映像の光と影に・・・(一)

 この夜は何かが狂っていた。まるで何かが共鳴しあっているように、深い闇夜の中で信じられないことが起こったのだ。町の人々は心の底に鍵をかけて閉じこめたはずの記憶におびえていたのである。
丘の上では朽ちたコンクリートの塊の上に、何者かによって残された映像が流れ始めた。
手持ちのカメラで撮影されたようで、歩調に合わせて画面が揺れている。どこかの町の風景だった。どんよりと曇った空・・・撮影者のすぐとなりにもう一人、誰かが歩いているような気配がある。それを見ていたウズラちゃんは小さな声で言った。
「この町の風景・・・見たことあるわ。」
そう、これはあの八年前の町の映像だったのだ。両親がウズラちゃんの前から姿を消した、あの八年前の・・・。カメラは撮影者の腕時計を写した。午前九時前を示す針。ウズラちゃんはその腕時計をどこかで見たことがあるような気がした。カメラは急に立ち止まった。そこには丁度壊れたガラスの窓があって・・・カメラを持った人物が立ち止まったほんの数秒間、カメラのレンズは撮影者自身と、同行する人物の姿をそのガラスの反射の中に捉えたのだ。
その瞬間、ウズラちゃんはその映像に写っている二人の姿にハッとして、思わず声を上げてしまったのだ。二人の顔の部分だけにひどいノイズが入っていて、顔は全く判別できなかったが・・・。
「お父さんとお母さんだわ。」
ウズラちゃんの発言にキリモミ君も驚いて、信じられないといった顔で画面を見た。
カメラは人影のない横道に入って行った。辺りを気にするように見回している。そこに古いトラックが一台停まっていた。カメラがトラックへと近づいていくと、運転席のドアが静かに開いて男が出てきた。男は二人に声をかける。
「急いで、時間がない。」
二人はトラックの荷台の幌の中に押し込まれるように乗せられた。幌の隙間からカメラが捉えたその男は・・・なんと、用務員のおじさんだったのである。
ウズラちゃんはつぶやいた。
「どういうことなの・・・?」


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