タイムカプセル

 一向は今度は慎重に掘り始めた。問題はただ、キリモミ君だったのだ。どうもキリモミ君は目の前のことに関心がいってしまうと、本来の目的を忘れてしまう傾向にあるのだった。すでに掘られていたトンネルは確かに途中まではイチジクの根に沿って掘られていたから、そこからまた別の方向へと掘り出した。先頭で掘っていたキリモミ君はウズラちゃんに訊いた。
「そのタイムカプセルっていうのはどんな形のモノなの?」
それを聞いていたチューはあきれてしまった。つまり前回掘ったときにはキリモミ君はタイムカプセルがどんなものなのか、それさえ知らずに掘っていたわけだ。
「まったくもって、君らしいね。」
チューはキリモミ君のボロ服のポケットの中でため息をついた。
ウズラちゃんはキリモミ君が掘った土を後ろへとかき出す役を引き受けていたが、ふと、手を止めて言った。
「確か青い色の箱だったわ。頑丈そうで・・・金属製だったと思うの。」
プロトタイプは、といえば、ポケットから顔を出しているシロネズミと一緒に、ただ腕を組んで見ているだけだった。チューはそれに気がついて小さな声で言った。
「見てごらんよ。あいつ、協力する、とか何とか格好いいこと言ったけど、結局ああして手を貸す気もないんだよ。」
地獄耳のプロトタイプはそれを聞き逃さなかった。
「とんでもない。何も分かっていないやつには発言して欲しくないね。人にはそれぞれ役割ってモノがあるんだよ。力仕事をする者もいれば、頭を使う役割だってあるのさ。ただがむしゃらに掘ればいいってもんじゃないんだよ。僕は今、あらゆる情報・状況を分析したうえで、どこにそのタイムカプセルがあるのかを推測しているのさ。」
やがてプロトタイプはキリモミ君が掘っているトンネルとは別の方向に自分で穴を掘り始めた。
それからほどなくして、キリモミ君は掘っていた指先に何か硬いものを感じ、そこに青色の物体を確認して叫び声をあげた。掘り出してみると、それは確かにウズラちゃんの言っていた通りの青い金属製の箱だった。しかし、・・・一方でプロトタイプも叫び声をあげたのだ。そして、彼が掘っていた穴からもまったく同じ大きさの青い金属製の箱が出てきたのである。
「一体どういうことなんだろう?」
ウズラちゃんは頭を抱えてしまった。
「そんなはずないわ・・・私がお父さんと埋めたタイムカプセルは一つだけだったもの・・・。」
しかし、現実に一向の目の前にはこうして二つのタイムカプセルが出現してしまったのだ。



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