いやいやながらの協力者

 一行はキリモミ君が掘ったトンネルを逆戻りして、建物と建物の間のあのイチジクの幼木の所に戻って来た。プロトタイプはすっかり疲れ切った様子だった。こぎれいだった服も長いトンネルをくぐる間にすっかりすり切れ、泥だらけになって、キリモミ君のボロ服とたいして差がなくなってしまっていた。今まで他人事(ひとごと)だと思っていたプロトタイプも自分の身に被害が降り注いで来たためにそうも言っていられなくなったのである。
「僕は今まで黙っていたけれど・・・」
プロトタイプは続けた。
「僕は君たちと会ってから二度も変な連中にさらわれたんだよ。はっきり言って迷惑なんだ。君たちとかかわりあいになりたくないんだよ。連中の目的はきっとキリモミ君なんだよ。それも躍起(やっき)になって探しているよ。」
キリモミ君はあくびをしながら言った。
「だけど、このまま出ていったら、また、すぐに捕まっちゃうのは目に見えているよ。やつらはどうも君と僕の区別がつかないみたいだからね。」
プロトタイプはまさにそのことに頭に来ていたのだ。プライドをいたく傷つけられて憤慨(ふんがい)しているプロトタイプをなだめながら、ウズラちゃんもため息をついた。
「どうしたらいいのかしら?」
プロトタイプは少し怒りがおさまってきてはいたが、それでも鼻息を荒くして言った。
「仕方ない・・・二度も助けてもらったんだ。いやいやながらだけど協力するよ。これまでの話をすっかり聞かせてくれよ。」
ウズラちゃんは八年前に両親の姿が消えてからこれまであった話をプロトタイプに聞かせた。性格は嫌な奴だが頭はいいプロトタイプはすぐに事情を把握したようだった。
「君たちの目的は一体何なの? ウズラちゃんと両親を会わせてあげるってことだろ? なのにすっかり部品を探しだすことに利用されてしまっているんだよ! やつらの目的がその部品なら、それを渡してやろうじゃないか。それでどうなろうと僕の知ったことじゃないね。」
ウズラちゃんは「とんでもない」といった顔で言った。
「だけど、お父さんとお母さんがあれほどまでして守ろうとした部品なのよ。それはきっと何か意味があるはずよ!」
プロトタイプは言った。
「僕は憎まれ口をたたくようだけど、ウズラちゃん、僕が君の両親の立場だったら、君を置いていかないよ。どんなことがあっても連れていくはずさ。なのにウズラちゃんを残していったのにはきっと深いわけがあるんだよ。それがヒントになるんじゃないか? このことに関わっている大人たちは何か隠しているんだよ。どうも周りの大人がとっている行動はおかしなところだらけだ。第一、用務員のおじさんとかいうあの男の言っている事だって変だと思わないのかい? ウズラちゃんの両親と八年前からずっと連絡をとっていたのにも関わらず、ウズラちゃんにはそれを黙っていたんだよ。そんなこと、普通だったら考えられないよ。全ての大人は信用ならない。それが僕の考えさ! だってそうだろう?」
それを聞いていたキリモミ君はポツリと言った。
「ウズラちゃんの両親は、本当にその部品とやらを持ち出して逃げているのかな? 本当は連れ去られたんじゃないのかな?」
ウズラちゃんとプロトタイプはその言葉にハッとしてキリモミ君を見た。キリモミ君は続けた。
「いろいろ考えてみると確かに変だよ。どうする? ウズラちゃん。」
ウズラちゃんは決意を固めたように言った。
「やっぱりあのタイムカプセルを掘り出してみるわ。それでないと全てが始まらないような気がするの。」


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