『大いなる機械』の大いなる野望

 用務員のおじさんは油を手ぬぐいで拭きながらキリモミ君達の前へと現れた。そして少々疲れたような表情の上にも笑みを浮かべて、自分の家が壊されて、離ればなれになってしまってからこれまでの出来事を話しだした。
ウズラちゃんのお父さんとお母さんが作り上げた装置(マシーン)達を見て回ったこと。わかっている六台のうちの四台までは自分の目で調べたが、あの『大いなる機械』の連中が必死になって探している部品はどこにも無かったこと。用務員のおじさんはそこで大きく息を吸ってから、さらに話を続けた。
「残るはあと二台だが・・・、問題もあってね。そのうちの一台は、キリモミ君、きみだ。あと、残りの一台はどこにあるのか、その場所さえ分かっていない。」
キリモミ君はそれを聞いて目を白黒させた。ウズラちゃんは立ち上がって言った。

「おじさん、ひとつ教えてくれませんか?
お父さん達が命をかけてまでその部品を『大いなる機械』 に渡したくなかったのはなぜなの? それが『大いなる機械』に渡ってしまうと何か良くないことがあるんでしょう? それって、一体どんなことが起こるの?」
その時だ。ネズミのチューがシロネズミと一緒にすごい勢いで走ってきたかと思うと、キリモミ君のポケットの中に飛び込み、顔を出してキリモミ君に言った。
「大変だよ! あのこぎれいなキリモミ君のプロトタイプがさらわれたんだ。サングラスをしたスカーフの女と若い男に捕まって車に詰め込まれて行っちゃったよ!」
驚いた一同が急いで表に出たときには、すでにその車の姿さえどこにも見当たらず、吹き抜けた肌寒い風の中に、それでも人形を作り続けるロボットの音が、ただリズミカルに流れていた。




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