ウズラちゃんへ

 ここで会えると思っていたけれど、いよいよ『大いなる機械』のやつらが動き出したので私は先に出発しなれけばならない。やつらはウズラちゃんのお父さんが開発したあの部品を八年前からずっと血眼(ちまなこ)になって探している。その部品が『大いなる機械』の手に渡ることだけは何としても阻止したい。やつらがそれを手に入れてしまえば、大変なことになってしまうのだ。そして、そんなことになってしまっては身の危険をおかしてあの部品を『大いなる機械』から持ち出してくれた、ウズラちゃんの御両親、そして、私の父親やその教え子をはじめとする数多くの仲間達に申し訳がない。あの部品を守ることは私にとって運命なのだよ。
この話をすればウズラちゃんを心配させてしまうのではとそれが気掛かりなのだが、こんな状況になってしまっては本当のことを話したほうがウズラちゃんのためになると思って、この手紙を書くことにした。実はつい最近までウズラちゃんの御両親は無事でいることが確認できていたのだが三日ほど前にお父さんから突然入ってきた暗号のような伝言の後、連絡がとれなくなってしまった。そして、私がそれを受け取った直後に私の家はやつらにつぶされてしまった。どうやら『大いなる機械』の手が伸びてきたらしい。お父さんはあの部品に関する資料は八年前にすべて焼いてしまっていて、ただ一つ、試作品として作った部品があるのだと言っていた。私が三日前に受け取った伝言にはこう記されていた。「その部品は私の子供たちの心の中にある」と。ウズラちゃんのお父さんは『大いなる機械』からそれを持ち出した後、各地を転々としているのだけれど、その先々でいくつもの装置(マシーン)を作り上げている。どうやらそのどれかに部品を使ったらしいのだが、・・・私が知っているだけでも装置は六台ある。この丘の上のチンザ君もその一つだ。私はこれからその部品が見つかるまですべての装置をあたってみる。ウズラちゃんの身にも危険が迫ってこないとは限らない。この手紙を確実に処分した後、この丘の向こうに続いている細い道を北に向かって進んで欲しい。最初の小さな町で次の連絡が取れるようにしておくよ。もっと多くのことを話したい。そして、すべての決着がついたとき、きっとウズラちゃんもお父さんとお母さんに会えるだろう。


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