子供達は怪訝な顔をしてキリモミ君を見た。そして眉間にしわを寄せ、目を細めながらキリモミ君に言った。
「うっせんだよ、バーカ。見りゃあ分かるだろ、バーカ。ヤニ食ってんのさ、バーカ。先公だって吸ってるっていうのに俺たちゃ吸っちゃいけねえとでも言うのかよ、バーカ。」
キリモミ君は目を白黒させながら言った。
「いや、吸うのはいくら吸ってくれても結構だよ。僕が迷惑に思っているのは君らが得意になってくわえているその煙突と、君らの口や鼻から吐き出されている煙だよ。吸うだけ吸って、煙さえ出さないでくれたらそれでいいのさ。思う存分得意な顔して吸いまくってくれよ。」
そのときだ。突然キリモミ君は何者かに首根っこをつかまれてしまった。一緒にいた子供達も同じように首根っこをつかまれて手足をバタバタさせていた。
「よおし、捕まえたぞ、このクソガキ連中め!こってり絞り上げてくれるぞ!」
数人の教師達に捕まえられたキリモミ君と子供達は、用務員室に連れ込まれた。教師達は用務員室に入るなり、目を丸くして驚いている小柄な用務員のおじさんを隅に追いやったかと思うと、煙突をくわえ、その狭い室内に口や鼻からもうもうと煙を吐き出し始めた。捕まえられた子供達は神妙にしていたが、ポケットの中のチューは苦しそうに咳込んでいた。用務員のおじさんも部屋の隅で咳込んでいた。どうやらおじさんも煙が苦手のようだった。そして教師達は一息つくと、横柄な顔で子供達を怒鳴りあげた。
「コソコソ隠れて吸ったりしやがって、どうなるか分かってるんだろうな!」
キリモミ君はそんな教師達の態度を見ていた。そして鼻を鳴らして「ふん。なるほど、そうなのか。」とつぶやいて、こう続けた。
「あんたたちがどれだけ偉い立場なのか僕には分からないけれど、これだけは言えるね。この子供達は少なくとも他の人がいないところで煙を吐き出していたんだから、あんたよりはずっと思いやりがあるってことさ。そういう姿勢は、あんたたちもこの子供達に見習うべきなんじゃないのかな。」
この学校でのキリモミ君の記憶はここで再び途絶えてしまう。
今になって思うことだが、どうやらこの発言が原因のようだった。キリモミ君はカッとなった教師達に取り囲まれたかと思うと、バラバラに壊されてゴミバケツにほうり込まれてしまったのだ。
「まったく君って奴は・・・。」
チューは呆れた様子で無残な姿のキリモミ君に言った。
「相変わらずのその世間知らずには困ったもんだね。壊されたくなかったら発言は謹まなくっちゃ。」
チューはため息をつき、そしてどこかに走って行った。
 数日経った後で教師達の中の一人がキリモミ君の所在を調べたときには、もう、跡形もなくなっていた。用務員のおじさんも、あのとき捕まえられた子供達も、キリモミ君の行方については「知らない」と言い張った。
例によって目撃者は誰もいなかったが、
キリモミ君を持ち去ったのが、その生みの親であることは間違いないようだった。
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