太陽が昇って町が活気づいてくると、キリモミ君は男からもらった坊さんの服を着て町の表通りに立った。すると町の人々がキリモミ君の周りに集まって来た。そして、口々にキリモミ君の事を誉め称え始めたのだ。
「どうしようもない奴だと思っていたが反省して真面目に生きて行く気になったんだね。立派だよ!」
そんな人々の様子を見てキリモミ君は鼻を鳴らした。
「ふん。なるほど、そうなのか。」
キリモミ君の服の袖の中に潜んでいたチューには悪い予感がしていたが、キリモミ君はそんなチューの心配などおかまいなしでこう続けたのだ。
「世の中、社長らしい格好をしたって社長たる素質がまるで無い奴だっているさ。警官の制服着てたって未だに僕を捕まえられないボンクラおまわりだっているし、犯罪を犯す教師だって服装だけはとりあえず教師っていう服装しているよ。腹黒い強欲な宗教家がこれだけのさばっている世の中なのに僕が坊さんの服を着ているからって反省してるっていうのかい。笑っちゃうよ。この町の人ときたらどいつもこいつも賢そうな顔して格好だけは一人前かもしれないけど、まったく、なんにもわかっちゃいないんだね!」
この町でのキリモミ君の記憶はここで途絶えてしまう。今になって思うことだが、どうやらこの発言が原因のようだった。
キリモミ君は町の人々に取り囲まれたかと思うと、バラバラに壊されてゴミバケツにほうり込まれてしまったのだ。
「まったく君って奴は・・・。」
チューは呆れた顔で無残な姿のキリモミ君に言った。
「その世間知らずな所は困ったもんだよ。壊されたくなかったら発言は慎まなくっちゃ。」
チューはため息をついて、そして何処かへ走って行った。
 夜が更けて人影も無くなった町。まるで舟のように大きな荷車が音もなく通りを滑って行く。そして、ゴミバケツの前で止まると、荷車を引いていた男は辺りの様子を窺うようにしながら、中に入っていた無残な姿のキリモミ君をそっと荷車の中に入れて、再び音もなく闇の中に消えて行った。
月影の中、その人相はよく分からなかったが、どうやらこの人物がキリモミ君の生みの親であることは間違いないようだった。



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