プロトタイプ

 その腹話術人形はキリモミ君に近づいて来て、なめ回すようにジロジロとキリモミ君を見てからまるで馬鹿にしたような顔をしてこう言った。
「ふん、やっぱりそうか。どおりでいい加減な仕上げがしてあると思ったんだ。」
いきなりこんな無礼な言葉を浴びせかけられてキリモミ君はカチンときた。
「何だって言うんだ! 挨拶もなしにその言い方は!」
ウズラちゃんもそれに加勢した。
「そうよ! ちょっとあんた、失礼なんじゃない?」
こぎれいなスーツのその腹話術人形はそんな二人の言葉などまるで気にも留めていないように言葉を続けた。
「いいかい? 君たちは知らないだろうけれど、僕はプロトタイプなんだよ。君は僕を元にして作られたコピーなんだ。僕は熟練した人形職人の手作り。そして残念だけど君は型に流し込まれて成型された、月産一万体の大量生産品なんだよ。」
そんな話はキリモミ君にとって初めて聞く話だった。腹の虫は収まらないものの彼の話に興味があったキリモミ君は彼を作ったおじいさんが仕事をしていたという人形工房に行ってみることにした。
そこは既に廃屋と化していて、主(あるじ)であった人形職人が制作した数多くの個性的な人形たちがひっそりと生活していた。そして、そのあばら屋のような工房の隣には白く輝く近代的な工場がそびえ立っていて、そこは偶然にもウズラちゃんが用務員のおじさんからの伝言で行くように言われていた、まさにその場所だったのである。

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