複製され続ける町

 キリモミ君とウズラちゃんがその町のはずれに着いたのはそれから丸一日経った次の日の朝だった。
どんよりと曇った空の下に現れたこの町を見てキリモミ君は驚いてしまった。それはキリモミ君達が生まれ育ったあの町とどう見ても同じ町にしか見えないほどそっくりな風景の町だったからだ。理由は単純だった。この町にも『大いなる機械』は進出していて、町のほとんどの人達は『大いなる機械』で働いていたからだった。人々の生活からして二つの町は全く同じ事をやっているのだから、そっくりな町が出来上がってしまうのも無理はないのであった。
「キリモミ君、驚くには当たらないのよ。こんな町がこの国には数えきれないほどあるんだから。」
ウズラちゃんのその言葉にキリモミ君はさらに驚きの声をあげた。そして、さらに驚くべきことがあったのである。ちょうど出勤時間帯となって、まるで大きな川の流れのように町の人々が動き出し、キリモミ君とウズラちゃんもその中に紛れ込んで行こうとしたちょうどその時、人込みの向こうに何とこぎれいなスーツに身を包んだ腹話術人形を発見したからだった。さらにそのスーツのポケットからはこれまた宝石のルビーのように赤く輝く瞳を持った美しいシロネズミが顔を出しているではないか。大きくうねるような人の流れの中で目を見合わせた両者は、そこにただならぬ予感を感じたのであった。




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