運命の出会い?

 突然、校庭に現れたつむじ風は、黄色い砂ぼこりを舞いあげながら西から東へとゆっくり移動して行った。校庭の隅で花壇の手入れをしていた用務員のおじさんは、ふと手を休めてそんな様子を見ていたが、つむじ風がまるでひもを解いたように消えて行くと、今度は目の前の世界から、遠い記憶の風景の中へと滑って行くのだった。

 思い出すのは小さな子供のときに見た光景だった。
どこまでも続く緑の野原で、自分は父親に連れられて野草を摘みに来ていたのだ。ところがその日は誰かが既に来た後だったのか、お目当ての野草が見つからず、父親は少々機嫌が悪かった。
そんなとき、野原に突然小さなつむじ風が現れて、それに気がついた父親は、顔を輝かせてそれを指さし、自分に向かってこう言ったのだ。
「見ろ!運がいいぞ!つむじ風は思いもかけなかった幸せを運んで来てくれる。」

 鎌を持った手を再び動かしながら用務員のおじさんは考えた。みんなわたしが失ってしまったものだ、・・・と。
そんなことを考えて、ため息をついたとき、おじさんの視界で何か小さなものが動いた。それはネズミだった。おやっ、と思ってそのネズミが走って行ったほうに目をやると、そこにボロ服を着た、あの腹話術人形を見つけたのだった。おじさんは微笑みを見せたが、すぐに厳しい表情になり、低い声でキリモミ君に言った。
「ここじゃ危ない。あの一輪車の中に隠れなさい。安全な場所で話そう。」



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