煙突だらけの町

 この町は煙突だらけだった。町の建物という建物にはことごとく煙突があり、空に向かって黒い煙を吐き出していた。それだけではない。町を碁盤の目のように区切っている道路にはたくさんの自動車が煙突を立てて煙を吐きながら走っていたし、さらに困ったことに町の人々の多くが口に煙突をくわえて得意げになっていたものだから、もう、この町といったら建物の中も外も、どこに行っても煙だらけというありさまだった。
この煙の被害を真っ先に受けたのがネズミのチューだった。チューはキリモミ君のボロ服のポケットの中でどうにか耐えていたがそのうちひどく咳込みながらキリモミ君に訴えた。
「君のボロ服のフィルター効果をあてにしたのが間違ってたよ。穴だらけで中でも外でも変わらないんだから!」
チューはさらに大きく咳込んで、真っ赤になった涙目でキリモミ君に懇願した。
「お願いだよ。この煙には我慢ならないよ。どこかもっとましな所に行きたいよ。」
キリモミ君はあまりにもチューが可哀想になって、キリモミ君としては珍しく必死になってこの町の中で一番煙が少ない場所を見つけたのだ。
さんざん探し回って見つけたその場所が、皮肉にも学校だったと知ったチューは、それでもしぶしぶ同意したのだった。キリモミ君はチューの子供嫌いを知っていたから少し気の毒に思ってチューに言った。
「この前みたいなことにはなりゃあしないよ。チューはポケットの中に入っていればいいんだから。それに、どういう訳だか知らないけれど、子供は煙突禁止ってことになってるらしいよ。」
ところが話はそうすんなりとは行かなかった。
キリモミ君が技術科室でしでかした例の件は、既に学校中に知れ渡っていて、どこの教室でもキリモミ君を受け入れてもらえなかったのだ。
仕方なくキリモミ君はトイレに行ったり体育館の裏に行ってみたりしたのだが、どういう訳か、そういうところでは子供達が煙突をくわえて得意げになっているではないか。せっかくきれいな空気を求めて学校にやって来たのにこれでは意味がなかったので、キリモミ君はちょっと腹立たしくなって体育館の裏で煙突をくわえて得意になっていた子供達にこう言ったのだ。
「君らはここで何をやっているんだい?」



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送