暗い部屋で

「この町では・・・」
と、そこで大きなため息をついてから、その人物は続けた。
「制服がすべてなのだよ。」

 かなり暗い部屋だった。
腹話術人形のキリモミ君は目を大きく見開いて、その声の主を確かめようと思ったが、とても無理だった。
その人物は、おそらくキリモミ君に向かって話しているのだ。なぜならこの部屋には、さっきから話しているその人物と、キリモミ君と、そしてポケットの中に住みついているネズミのチュー以外に何の気配も感じられなかったからだ。

 長い沈黙があった。
キリモミ君はさっきから何でもいいからしゃべりまくりたかったのだが、どうしたことか、それも出来なくてただ目を白黒させた。暗すぎて何も見えなかった。そのときキリモミ君に感じられたのは、ポケットの中のチューが動いていること・・・それだけだった。
とにかく、こんな状態がいつまでも続くはずがない、何か新しい展開があるんだろう、それまで待ってやれ、とキリモミ君は腹を決めた。すると間もなく、更に大きな暗闇が目の前に広がって来たかと思うと、キリモミ君はすっかりその中に飲み込まれてしまったのだ。



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